東雲くんは【平凡】がわからない!

◇◆◇
「ふう」

夜。もうあとは寝るだけという時間。
わたしは自室で今日の出来事を思い返していた。

転校初日。
まあ、よく頑張ったよね。
柳さんたちの友達グループにも入れそうだし。上出来上出来!

あ、柳さんたちLINE教えてくれるかな。
友達とLINEなんてどれくらいぶり?楽しみだなあ。
今度は前の学校みたいにならないように上手くやらなきゃ。


「……わたし、上手くやれるよね?」

部屋を見渡す。夏休みの間に頑張って片付けた新しいわたしの部屋。
引っ越す前の部屋とは全然違う。

本棚に並ぶのは流行りの雑誌や、みんなが読んでる少女漫画。魔術書やお呪いの本じゃない。
壁に貼っていた魔法陣ははがしたし、枕もとにおいていたパワーストーンも撤去した。

これで友達を家に呼んでも引かれることはない。
普通の、平凡な、女の子の部屋だ。

これで、いい……

「………」

わたしは部屋のクローゼットの扉を開けた。
洋服やカバンにまぎれて、奥に段ボールが置いてある。

「捨てようと思っていたのに……」

この段ボールにはわたしの黒歴史が詰まってる。
魔術書も、パワーストーンも、ファンタジー色の強い漫画や小説も、自分で考えた呪文や魔法陣も。
(……我ながらよく集めたな)