『日和、迷子になるからこっち。』
学生最後の夏休み
軽井沢での瀬木さんのお仕事も
順調に終わり、残りをどう過ごそうかと
思っていたのに、次の執筆の資料
集めに沖縄に行くことになった。
初めての沖縄‥‥
東京も暑いけど、また違った暑さと
熱風が肌を掠めていく
『楽しそうだね。』
タクシーに乗り、道路脇に並ぶ
ヤシの木やすぐそばに見える綺麗な
海を子供のように眺めていると、
隼人君がそれを見て嬉しそうに
笑っていた。
仕事で来ているとは分かっていても、
初めての沖縄はテンションが上がる。
こんな形で来れることになるなんて
隼人君‥瀬木さんには感謝しかない‥
飛行機代だって宿泊代だって1円
たりとも貰ってくれないし、自費で
来たらそれなりに絶対高いはず
『着いたよ。行こうか。』
「えっ!!?ここ!?」
スーツケースを転がしながら歩く
隼人君がドアにスマホをかざすと、
ガチャリと鍵が空き、そこから見えた
毛先に口が開いてしまう
平家に赤瓦屋根が美しい建物の中は、
正面に見える美しい海が窓から
眺める事が出来、中庭にはプールや
サウナまで兼ね備えてある
キッチンもあるし、広いジャグジーバス
にキングサイズのベッドルームに客室
まで。
ホテルというより高級なお家だ‥‥
『気に入った?』
景色を眺めていた私を後ろから抱き締める腕がお腹に絡められると、後ろを
見上げた私の唇がすぐに塞がれた
「気に入ったよ‥‥隼人君は
お仕事出来そう?」
沖縄を題材としたお話も楽しみだから
瀬木さんのアシスタントとして、
頼まれたことはなんでもやりたいな。
『日和がいてくれるから頑張れるよ。』
3泊予定のヴィラでは、シーツやタオル
のみ毎日運んで貰えるものの、
食事や掃除などは自分達で行う為、
隼人君にとってはいつもとあまり
変わらず仕事がしやすいらしい。
食材はネットスーパーで予め
頼んでいた為、荷物を片していると
冷凍ものからお酒類まで大量に
届いたので余裕で大丈夫そうだった
『少し海辺でも歩く?海も入りたい
なら着替えて行こうか。』
海!!
実はこの歳になって海で泳いだ事が
ないので初体験でワクワクしてる
プールや川は何度もあるものの、
都内と北海道で過ごした私はなかなか
海に行く機会がなかったし、本が
好きだったからインドアだったのだ



