恋愛日和    after story omnibus

目を閉じて色々を考えていると、
残念なことに最初に浮かぶのは、
やっぱり1人しかいなかった。


『お待たせしました。』


ドキッ


足を広げてだらしない姿勢で
寝ているような状態だったことに
慌てて目を開け姿勢を正す。


第一印象から最悪だ‥‥。
一体どんな顔して‥‥‥


『お待たせしました。』


同じ台詞を二度告げた相手に、
瞳が大きく見開かれ、幻でも
見ているようで固まる


『‥‥ヒカリ?‥‥お前何して‥』


金髪ベリーショートで、見合いに
来るような格好じゃなく、相変わらず
タンクトップにスキニージーンズと
男勝りな装いに思わず口元を押さえた


『初めまして、櫻井 光です。
 職業はプロのピアニストを
 している為、世界中を駆け回って
 生きてます。』


櫻井‥‥?
じゃあ教授の娘ってヒカリだったのか?


色々が一気に起こりすぎて、
頭がついていかない‥‥


『‥‥櫂‥‥私達付き合おうよ』


あまりにもいつも通りの彼女の
声や態度に、この一月悩んで
引っ越したのが馬鹿みたいだな‥



『‥‥教授の娘がさ‥以前から
 俺のことを知ってたらしくて
 えらく気に入ってるんだと‥
 こんな俺の何がいいんだろうな?』


『ふふ‥そうね‥‥離れてても必ず
 会いたいって思う唯一が私には
 櫂だったのよね‥‥
 ねぇ‥‥寂しかった?』


ヒカリの顔を見たら泣きそうで、
カッコ悪いしダサいから俯いたまま
両手で顔を覆う


ピアニスト?
世界中を駆けまわってる?


俺はヒカリのことを知ってるのに、
何も知らなかったし聞けなかった
小心者だというのに‥‥


『おうちに帰ろ。
 カレー作ってあげるから。』


『ハハ‥またカレーかよ‥』


前から俺を包むように抱き締める
体温や香りに、ハンカチで目元を
拭うと、立ち上がってヒカリを
腕の中に抱きしめた


『ヒカリ』


『ん?なに?』


『‥‥なんでもねぇ‥帰るぞ。』


バーで偶然出会ったから5年

初めて好きな女と手を繋いで家に帰った


何考えてるのかわからない女だけど、
やっぱり俺は他の女じゃダメらしい‥


『はぁ‥やっと報告できるわ。』


『誰に?』


『いつまでも彼女が出来なくて
 心配してる可愛い妹にだよ。』


肩を抱き寄せ唇を塞ぐと、
それじゃあ物足りなくて、帰ってから
朝まで何度も抱いた。


もうこれ以上ひとつになれないほどに
くっつき、何度も繋がり、目が合えば
笑っていつまでもキスを繰り返した。


『そう言えばあの写真は誰だよ?』


『妹よ‥ああいうのがタイプ?』
 


『フッ‥残念だけど、俺、お前しか
 興味ないわ。悪いな?』




END