恋愛日和    after story omnibus



『夏休み中に課題のレポートを
 各自纏めて提出するように。』


チャイム音と共に講義が終わると、
生徒が一斉に立ち上がり、俺も
肩をぐるっと回してから首を鳴らした


「お兄ちゃん、ちょっといい?」


『こら、ここでは立花助教授だろ?
 どうした?』


4年生は単位が終わってる生徒は
無理して受ける必要はないのに、
わざわざ時間を見つけては受けにくる
妹の姿に嬉しさを堪えてコツンと
おでこを突いた


いつまで経ってもシスコンと
言われても仕方ないほど大事な妹は
可愛いんだよ。



「瀬木さ‥‥隼人君がまた夏に
 別荘に行くけどお兄ちゃんは
 今年はどうするか聞いてきてって
 言われたから。」


そっか‥‥
ここ数年は便乗して行ってたっけ‥


旅行に行く暇もないから、あの2日
間だけでも空気が美味しい場所で
過ごせるのが楽しみなんだよな。



『お前は行くんだろ?』


「うん、2週間全部行く予定だよ。
 和木さんたちも数日来る予定みたい
 だけど日程は決まってないみたい」


『隼人に連絡しとくわ。
 それよりもお前、別荘もいいけど
 偶には北海道に帰ってやれ。』


てっきり出版社の就職先一本で行くかと
思ってたのに、日和が選んだのは
制作プロダクション関係の仕事で、
将来隼人を支える為にも色々学んで
おきたいらしい。



小さい時は俺の後ろに隠れて、
内気で本ばかり読んでたのに、いつの
間にかこんなにも大きくなったんだな‥


「うん、お正月には帰るよ。
 お兄ちゃんこそ帰ってないじゃん」


『俺は忙しいの。』


「忙しいって彼女いないのに?」


ドクン


歳の離れた妹に突っ込まれ、
視線が10時の方向に逸らすと
ノートパソコンを畳んでから妹の
頭をクシャッと撫でた


『俺のことは心配すんな。
 日和は自分の事だけ考えろ。』


小さい時はお兄ちゃんお兄ちゃんって
いつも頼りにしてたのに、恋愛絡みで
歳の離れた妹に心配される日が来てしまうとはな。



昼の講義を終えた後、夕方買い物をして
アパートに帰ると、ドアを開けた途端
香ってきた良い匂いに一気に食欲が
増した。


『おかえり、櫂。』


金髪に染めたベリーショートの髪に、
オシャレとは程遠いタンクトップと
ショートパンツ姿で出迎えられ、
久しぶりに大きな溜め息が溢れた