今は車という覆いがあるからいい。 だが、きっと海岸に着いたらこの人波を歩かされるんだ。 そう思うと憂鬱で仕方なかった。 あたしはいつからこんな風に思うようになったんだろうか。 まだ男が平気だった頃は、花火大会というとドキドキワクワクしていた。 人込みに出ることよりも綺麗な花火を見たいという想いの方が勝っていた。 それなのに―――……。 物思いにふけっていると、車が人々の向かう方角とは違う方に曲がり、あたしの意識は現実に引き戻された。