狭くも広くもない客席で小さく円を描くように並ぶ男達の視線が突き刺さり、あたしは中々顔を上げることが出来ないでいた。


ハ…ハルのバカ!


こんなに男がいるなんて聞いてないわよ!!




あたしは自分の右隣に立つ幼なじみのハルに心の中で密かに悪態をついた。


「唯はオレの幼なじみなんで、オレからもよろしくお願いしますね」


あたしのそんな悪態に気付きもしないで、ハルこと藤基春(フジモトシュン)は笑顔で言った。


ハルの本当の名前はシュンだが、漢字が春だから、ハルって呼ばれている。


物心つく前からのお隣りさんで、あたしと同じ17歳だが、頼りになってお兄ちゃん的存在なんだ。


あたしと同じ制服をビシッと着こなし、細い顔に大きな目、うらやましいくらいに真っ直ぐな少し長めの黒髪。わりと格好いい方かもしれない。