コトンと目の前のテーブルにグラスが置かれた。


中から漂う甘酸っぱい香りに鼻孔をくすぐられる。



「これでも飲んで、落ち着いて」


シンさんに優しく言われたあたしの体は少し震えていた。


指先に力を入れ、あたしはグラスを持ち上げる。


ゴクッと中身を一口飲み込むと、あたしの大好きな100%オレンジジュース独特の甘酸っぱさが心を落ち着かせた。


そんなあたしの様子を、シンさんは射るような瞳で見つめながら、テーブルに置かれたあたしの携帯に手を伸ばした。



「見るぞ」


そう言って、静かな見慣れない室内に携帯を操作するカチカチという音が鳴った。