酸いも甘いも毒までぜんぶ

 さて、この殿方、名前はなんというのか。

 必死に記憶からそれっぽいのを探すも、全く名前が出てこない。これだと本当に失礼な奴になってしまう。

「そんな慌てなくていいよ。俺は天宮翔ね。そんで、何かあった?」

 あまみや、かける。よし、覚えた。

「いや、ちょっと家が失くなっちゃって」

「は? 燃えたとか?」

「そういうんじゃなくて、あの、追い出された、といいますか、ね?」

 詰問口調っぽく聞いてくる天宮くんに、しどろもどろになりながら答える。

「何で? 俺らまだ未成年だよな? 育児放棄?」

「わ、かんないなぁ。なんか、多分、気分? だと思うけど」

 私の言葉に、天宮くんはさらに厳しい顔になる。

 なんでこの人、こんな怒ってるんだろう。

「…帰るところ無いんだよね?」

「ん、無いデス」

不意に、彼が私の顔の前に手を差し出した