無世と有世の恋明暗

昼休み。琉美絵に頼まれて、私は無世のところに話しかけに行った。
「ねぇ無世」
「ん?」
「こっちの子。私の友達の小川琉美絵」
「小川琉美絵だよ。よろしくね」
「は、はぁ……」
無世は急になに?とでも言いたそうな顔で私を見ている。まぁそうなるよね。自分から話しかけに行けって琉美絵にも言ったのに……。
「こんにちは。私は琉美絵の友達の小川李江。琉美絵のつきそい。琉美絵の魅力を紹介しに来たの」
「……はぁ?」
今度は声に出てしまった無世。……いや、攻めすぎだよ、李江ちゃん!
「……まぁ、まぁ無世くん!あのさ、家庭科部に入らない?」
琉美絵が言った。それは、李江ちゃんのアドバイス。まずは同じ委員会でも部活でも入ること。そうすることで仲を縮めていくのだとか。
「……家庭科部?」
「そう。料理したりお裁縫をしたりするの。人数少ないし、無世くん、入らない?」
「いや、僕は……」
「えーっ!家庭科部ってそんなに人数少なかったっけ?」
そう言って話に入ってきたのは、まさかの夏美。ちょ、夏美!じゃじゃ、邪魔しないで!琉美絵の恋!
「この前まではたくさんいたよ。でも、ほとんどが三年生だったからね、今はぜーんぜん」
あ、よかった。琉美絵が夏美にキツイこと言わなくて。でもよく見たら、琉美絵、目が笑ってない……。やっぱり、川村くんのこと、すぐに吹っ切れるわけないよね。
「あの……有世さん、いる?」
その時、誰かが私を呼ぶ声がした。声のほうを見てみると、教室の入り口のほうに、去年同じクラスの野原っていう男の子が立っていた。
「はーい」
返事をし、野原のほうへ行った。すると野原は放課後話したいことがあると言ってきた。了承の意を伝えると、野原は安心したように帰っていった。
◆◆◆◆◆
「はーい」
有世は野原というやつに呼ばれて教室の入り口に行った。誰だよ、野原って。ぼくが知らないことから、クラスメイトではないことはわかるけど……。
「野原くん、なんの話なんだろうね?」
小川さんが言った。有世が李江ちゃんとよんでいたほうの小川さん。……苗字が同じって、わかりにくいな。
「そういえば野原くん、顔赤くない?」
有世が琉美絵と呼んでいたほうの小川さんが言った。それにつられて野原の顔を見ると、確かに赤かった。……というかこの女子たち、なんでぼくの前の席で話すんだよ⁉
「そういえば野原くん、去年からずーっと来花のこと見てたよねー。もしかして……」
え?な、なにを言おうとしてんだ、水野さんは。
「告白⁉」
こ……っくはくー⁉⁉う、う、嘘、だろー⁉はぁ⁉
……って、何考えてんだ?ぼく。
え?まさか、だけど……。ぼく、有世のことが好き、なのか……?いや、いやいやいや⁉昨日会ったばかりだぞ⁉これがいわゆる、一目ぼれ、っていうやつですか……?