「井ノ原…くん?」
美里の眉間の皺を見て、ようやく我に返った。
「おまえ、見えてないのか?」
「何かボーッとしてる。皆が浴衣にその眼鏡はないよねって言うから。変?」
「いや、おまえも女だったんだなぁって」
「ふん、悪かったわね。色気なくて」
「そうじゃなくて。びっくりした。マジ、きれいで…ヤバいよ」
そう正直に白状した途端、彼女は豆鉄砲をくらった鳩のように、目も鼻も口も、穴という穴を見事に見開いて勇介を見返した。
やがて、彼女の白い真ん丸い頬が赤く染まっていくのを見ているうちに、胸の辺りがズキンズキンと疼き出した。
多分、それが恋のはじまりだったのだと思う。
