夢の向こうにキミがいる



しかし、その時は案外早く訪れた。



クタクタになった部活の帰り、夜店の匂いにつられ、神社の夏祭りにふらりと立ち寄った時のこと。



祭の夜は甘酸っぱい恋の予感に満ちている。



髪を結い、思い思いの艶やかな浴衣で競い合うように夜店を練り歩く女子の群れ。



それを目当てに集まってくる男子も、ここ一番の勝負私服で髪を一様に作り込んでいる。



勇介はもちろん、今や注目度ナンバーワンの野球部が揃って顔を出すと、女の子達は色めき立った。



様々な思惑や視線が交差し、絡まり、境内の一画は急激に熱を帯び出した。



異性の視線を感じた時に分泌されるフェロモンは、中学生といえど侮れない。



どの子も教室で見るよりうんときれいに見える。



そんな雰囲気に少々あてられてしまったのかもしれない。



それでも勇介の視線が、何十人という女の子の中から、紺地に撫子の花を白く染め抜いた、たった一人の浴衣姿に吸い寄せられていったのは紛れもない事実だった。