だから、彼女が何のてらいも気負いもなく、勇介の胸にポーンと飛び込んできた時は、ちょっと驚いた。
きっかけはたあいもない。
数学の授業中、うとうと夢心地の時だった。
教師に指され、答えに窮していた勇介に、隣に座っていた女の子が正解を囁いてくれた。
しかし、その答えはまったく的外れなもので、教師からは「練習が大変なのもわかるが、学生の本分は勉強だ。くれぐれもいい気にならんようにな」と厭味たっぷりに返された。
もともと野球部の快進撃を面白く思っていなかったサッカー部の顧問だ。
ギャフンと言わせる機会を待っていたに違いない。
どうしてくれようものかと、きっと隣を睨みつけると、
「くくっ。ごめーん。一つ前の問題と…間違えちゃって…くくっ…」
当の本人は悪びれるどころか、必死で笑いを堪えている。
はぁー?!何だ、こいつ。
それでも、ますます笑いが止まらなくて地団駄踏んでいる彼女を見ていると、怒るのもだんだんバカらしくなってきた。
