やがて、父の発案した改造車が売れ始め、会社が急激に売上を伸ばすと、経営も任されるようになった。
金沢市内に移り住んだ井ノ原家は小さいながらも家を建て、借金も返した。
勇介は初めて家のことなど顧みることなく、部活動に没頭することができた。
真中美里と出会ったのは、そんな中学二年の春のこと―
その頃“M中の井ノ原”と言えば、町中の噂の的だった。
廃部寸前だった野球部が、県下きっての強豪チームと互角に渡り合えるようになったのは、公式戦デビューをノーヒットノーランで飾ったあの豪腕ピッチャーのお陰だと。
その上、このルックスだ。
野球部のグランドは勇介目当ての女の子で連日溢れ返った。
こんな田舎町の学校では、前代未聞の騒動だった。
