しかし、勇介が生まれてからも父は上京の夢を諦めきれず、何かといえば母にあたり、しまいには自分の夢を断念させた原因だと幼い我が子にも手を上げるようになった。
酒を飲んでは暴れ、そのうちギャンブルにも手を出すようになった。
世間体を何より気にする祖父から勘当を言い渡された後は坂道を転がるようだった。
借金、夜逃げ、職と家を転々とする日々。
妹が生まれたのは、父が友人に誘われて始めた自動車関連の仕事が軌道に乗り始めた頃だった。
少しばかり余裕ができて初めて父性に目覚めたのか、娘には周囲も驚くほどの溺愛ぶりだった。
息子とは可哀想なくらい、露骨に態度を変えた。
それでも妹が生まれてからの数年間は、恵まれない幼少期を送ってきた勇介にとって唯一幸せな時期だったといえる。
