『そんなことないよ。きっと帰ってくる。うーん。きっと今頃、智美にお土産買ってる頃かな』



『嘘!隣のみっちゃん言ってたもん。智ちゃん、可哀想ね。お父さんに捨てられたのって』



智美の目から大粒の涙がポロポロ落ちてくる。



勇介は思わず目を伏せた。



『みっちゃんは悪い子だな。そんな嘘ついて』



妹は頭をブンブン左右に振り、手足をばたつかせて泣きわめいた。



『違う!みっちゃんは嘘つき違う!今までだって、一回も智美に嘘ついたことないもん。

嘘つきはお兄ちゃんだもん。お兄ちゃんの嘘つき!お母さんの嘘つき!皆嫌い!大嫌い!』



妹は悲しみを全身で兄の背中にぶつけてくる。



勇介は胸をえぐられるような思いでじっと耐えた。



白いシャツの背中は、涙と鼻水と汗でじっとり濡れている。



『智美、嘘じゃない。きっと帰ってくるから。きっとな』