「真中?」
ふわふわと漂いながら深い静寂へと沈んでいく魂が、突如何者かに呼び戻された。
美里は声のした方へ、ゆっくりと視線を向けた。
「あ、井ノ原くん」
目が合った瞬間、風船を持つ手が緩んだ。
「あ…」
赤い風船はフワリフワリと漆黒の空へと舞い上がっていく。
「あ~あ~」
勇介は茫然と風船の行方を見守っている美里の隣にどっかと腰を下ろし、両腕をベンチの背にかけた。
「な~んだ。俺の名前覚えてんじゃん」
「……」
「すっかり忘れられてるかと思ったよ」
「…そっちこそ」
「なわけねぇだろ。今日だって、おまえに会うために、こんなとこまでノコノコやってきたっていうのに」
嘘!絶対嘘だ。
ほんとだったら、こんな風にスラスラと言えるわけない。
