駅前の本屋で賢がその白百合の天使に声をかけられたのは、ゴールデンウィークも明け、大学がようやく平常授業に戻った頃だった。
あれから半月―
はじめはキツネにつままれたような不思議な心持ちだったが、時が立てば立つほど彼女のことを考える時間が多くなり、最近では夢にまで現れるようになった。
『待った?』
あの時の彼女の可愛い笑顔を思い出す度、賢の胸はじんと熱くなる。
鼓動は高鳴り、指先は汗ばみ、しまいには何も手につかなくなってしまう。
今まで何度か人を好きになったことはあるが、こんなに息苦しさを覚えたのは初めてだった。
