そのトンボ博士が一目惚れをしたらしいと聞いて、無類の世話好きハルさんは俄然張り切り出した。
「いったいどこのどいつや?」
「例えば、芸能人で言うたら?」
そう言った途端、ハルさんは、まるで女子どものような自らの問いに思わず顔を赤らめた。
「白百合の、天使…かな…」
賢はうっとり呟いた。
「へっ?」
「松嶋たか子だよ。ほら、昔、朝の連ドラ“白百合の天使”のナース役で、驚異的な視聴率叩き出して…
何だったかな、その時の決め台詞が年末の流行語大賞にノミネートまでされて…」
エセ芸能評論家・修司のウンチクを聞いているのかいないのか、間抜けな笑みで白百合の天使を繰り返す賢を見て、ハルさんは大きなため息をついた。
「はぁーっ、あかん。完全にいかれてる」
「こいつ免疫ないからなぁ…」
修司は煙を吐きながら独り言のように呟くと、やがて何事もなかったように再びリモコンをパチパチやり出した。
