美里は病院を出た。



ふーっと大きなため息をついて、夜空を見上げる。



いつかプラネタリウムで見た半球のような星空に、逆三角形に輝く冬の大三角を見つけた。



ベテルギウス、シリウス、プロキシン。



美里は三つの一等星に自分達を重ね合わせた。



見失った自分を取り戻すため、夢を追って南米へ旅立った賢。



仮面を外し、光の射す方へと歩み始めた勇介。



自分が本当にやりたいことに気づいたばかりのわたし。



まだ赤ん坊のようにたどたどしい足取りだけど、すぐに転んで、泣いて、傷だらけになるだろうけど。



焦らないで、慌てないで、諦めないで、一歩ずつでも前へ歩いてゆこう。



夢の向こうにある何かをつかむまで―。



美里はもう一度、星空を見上げた。



師走のしんしんと冴え渡る冷気に、身も心も引きしまる思いがした。