もし自分が亜弓の立場だったらどうだろう。
すぐにでも駆けつけて話を聞いてほしいと思うだろうか。
それとも、放っておいてほしいと思うだろうか。
八つ当たりできる相手にでもなれれば、少しは気も晴れるだろうか。
自分のことを気にかけてくれる人が一人でもいると思うだけで、少しは救われないだろうか。
「遠くに越したんですか?あの連絡先…」
おばさんは仕方なさそうに首を左右に振り、美里の言葉を遮った。
「あんただから話したんだけど、わたしも仕事なんでね。これ以上は…ごめんよ」
「いいえ、いろいろとありがとうございました」
帰り際、おばさんは独り言のように呟いた。
「博士は今日は研究室だっけね。あの子なら知ってるんだろうけどさ…」
振り返ると、おばさんの顔に笑みが戻っていた。
「また遊びにおいでね」
優しさが胸に沁みた。
