言えば言う程、泥沼にはまりそうで、美里は途中で押し黙った。
「そっか、俺にも誕生日なんてあったんだな。でも、別に関係ねぇよ、そんなことは」
以前なら、ここぞとばかりからかう所だが、今日の勇介は違った。
美里の目を真っ直ぐに見つめ返した。
「真中…」
眼孔は窪み、隈ができていたが、瞳は澄んでいた。
あの頃と変わらない…
悲しいくらい、きれいな目…。
美里はいたたまれなくなって駆け出した。
勇介はそれでも追ってきた。
経済学部の校舎の前で腕をつかまれ、しばらく押し問答が続いた。
「ヒューッ!」
二人を遠巻きに取り囲むように、ざわざわと野次馬が集まり、誰かが口笛を吹いた。
とにかく、これ以上ここいることだけはできない。
美里は観念した。
「わかったわ。ちゃんと話を聞くから…だから、腕を放して」
