結局、マフラーも手袋も見つからない上に、時間だけくってしまった。
美里はスカートを脱ぎ散らかしたまま、ジーンズにピョンピョン足を突っ込み、厚手のPコートと、ふと目についた机上の手帳をひっつかみ、まとめ髪を乱暴に振りほどいて再び外に出た。
雪国育ちだから寒さには強いと思っていたが、案外こっちへ来てきてからの方がよく風邪をひく。
東京では年が明けない内は暖かい日も多く、つい油断してしまうからだ。
首をすくめ、歯をくいしばり、強風に煽られ、何度も立ち往生しながらなんとか自転車で駅まで辿り着いた。
暖房の効いた電車に乗った途端、ようやく生きた心地がした。
凍える手をさんざん擦り合わせ、ポケットに滑り込ませると、何か堅い物に当たる。
さっきマフラーが見つからない腹いせにポケットに突っ込んだ手帳だった。
