「うふふっ、何ムキになってんのよ」
勇介は憮然と応えた。
「ムキになんかなってない」
「そぉかしら?あははははっ」
瑛子はさも可笑しそうに笑った。
そうだ。わかってる。
こんなことは今に始まったことじゃない。
俺が落とした女一人一人に探りを入れ、品定めし、時にはからかい、時には挑発するのが瑛子の唯一の愉しみだったでないか。
そうして、たいていの女は瑛子の存在に恐れおののき、いつしか勇介から離れていく。
はじめのうちは怒り狂ってもいたが、そのうち、こっちから別れ話をする手間が省けてちょうどいいやと黙認していたのは俺の方ではないか。
いや、最近ではそろそろ潮時かなと、瑛子をそそのかすことさえあった。
別にどうってことはない。
怒ってなんかいない。
ああ、そうだ。潮時だったんだ。
これでちょうどよかったんだ。
