「亜弓ちゃん、博士のこと好きなんだ」
美里のぶしつけな質問にひるむことなく、亜弓は堂々と答えを返した。
「うん。大人は皆嫌いだけど、博士は別。心がきれいで、誰にでも同じように優しいから」
あ…
胸を突かれる思いがした。
そんなことは亜弓に言われなくてもわかっているはずだった。
それなのに、過去の甘酸っぱい感傷や、勇介のセクシーで危なげな魅力に振り回されっ放しで、敢えて気づこうともしなかった。
こんな小さな子供が、ちゃんと人間の内面を見抜いているというのに。
「バカだね。わたし…」
がっくり肩を落とした美里を、亜弓は何とも言えない複雑な表情で見つめていた。
が、そのうち凜とした美しい顔立ちが微妙に崩れ始め、しまいには鼻をすすり出した。
