煮えたぎったお湯を見つめていた勇介がボソッと呟く。
「会いたかった」
えっ。
その一言で、今まで抑えていたタガが弾け飛んだ。
火を点された蝋燭のように、からだの芯が熱く溶けてゆく。
唇から熱い吐息が洩れた時、電子レンジがチンと鳴った。
「あぢっ!」
勇介がレトルトの封を切ってチンしたご飯にかけると、ふわっと甘いデミグラスソースの匂いが部屋中に広がった。
「あ…カレーだと思ってた」
「ああ。カレーは辛口が好きだけど、ときどきこういう甘っちょろいもんがほしくなる。
いつだったかお袋が作ったビーフシチューを珍しく親父が誉めたもんだから、それ以来、何かっていうとバカみたいにこればっかで…
ああ、そう言えばあの時、おまえのビーフシチュー食い損ねたな」
目もあてられない醜態に触れられ、美里は恥ずかしさに身をよじった。
あの時のことは二度と思い出したくない。
