雪絵は大きな目を見開いて、だんだんうつ向きがちになっていく美里の顔をそっと覗き込んだ。
「でも、向こうはわたしのことなんか…」
『運命の再会を祝して、このままホテルへ直行しようか』
勇介のからかうような甘い囁きが耳に熱く甦る。
美里は唇を噛みしめた。
「井ノ原くん、今じゃ、筋金入りのタラシって言われてるんだよ。
雪絵、野球一筋で、クールだった井ノ原くんはもういないのよ。
わたしにとって井ノ原くんは…想い出の中だけの人なのよ」
「で、現実の人が賢ちゃんってわけ?」
「うん…でも、そう思えば思うほど、賢ちゃんのことがだんだん煩わしくなってきて。
彼、ほんとにいい人だから、余計に息苦しくなってきて…」
「それで逃げ出してきたんだ」
「うん…」
