「雪絵にはかなわないわ。実はね…」
包み込むようなあたたかい笑顔で美里の話を聞いていた雪絵だったが、さすがに勇介の名前が出た途端、顔色が変わった。
「そうかぁ。井ノ原くんと再会したんじゃ、美里が動揺するのも無理ないな」
「うん…」
「井ノ原くんが突然転校した時、美里がどれだけ落ち込んだか…かける言葉もなくてさ。二人で毎日ぼーっと夕日見てたよね」
放課後の校庭にこだまするブラスバンドの物悲しい響き。
校舎に沈んでいくオレンジ色の夕日。
ザックザックと近づいては二人の前を通り過ぎていくスパイクの足音…
じんわり浮かんでくる涙をかき消すように、美里は大口を開けて笑った。
