幼なじみの浅井雪絵(アサイ ユキエ)が、大輪の牡丹が咲き乱れる茜色の浴衣姿でフラリとやってきたのは、美里が実家に帰ってちょうど一週間たった頃だった。



「…で、向こうで何があったの?」



美里は思わず口の中に頬張っていたスイカを吹き出した。



「な、何がって。別に何もないわよぉ」



「嘘。何もないのに二十歳のバカンス放棄して、あんたがこんなお堅い家に帰ってくるわけないでしょ。

いつもはバイトだ旅行だって、夏休みに帰ってきたことなんかなかったって…

おばさん心配してわたしに電話くれたのよ」



「あーもう。そういうこと?あの人は余計な…」



ブツブツぼやきながら、口元や机の上に飛び散ったスイカの残骸を落ち着きなくティッシュで拭いている美里を見て、雪絵は軽く肩をすぼめた。



「ま、聞かなくても大体わかるけどね」