ただ、野球というたった一つの夢を諦めなければならなかったことがつらかった。
悔しかった。
その絶望感をどうすることもできずに持て余していた。
夜の街をさまよい、目に映るものすべてを傷つけた。
『生まれてこのかた幸せになんてお目にかかったことないわ』
と笑う瑛子といる時だけは救われるような気がした。
互いに自分と同じ匂いを嗅ぎとった二人は、やがてごく自然な形で結ばれた。
それから七年もの月日が流れ、恋や愛という浮かれた感情はとうになくなってしまった今でも、勇介にとって瑛子は特別な存在だ。
責めない。甘えない。望まない。
ただ、勇介のすべてを受け入れ、すべてを許し、悲しみだけを吸い取ってくれる。
だから、勇介はことあるごとに瑛子に帰っていく。
女と別れた時。母親が再婚した時。妹が施設に入った時。
そして、昨日の夜も…
