胸をすくような切なさに襲われながら、ぱちぱちと弾ける最後の火花を眺めていれば、中原が少し硬い声で私を呼んだ。
「広瀬」
「うん?」
「あのさ」
中原がこれから何を言おうとしているかなんて検討もつかなかった。そのときの私に知る由もなかった。
爆ぜる火花の音をBGMに、彼は迷いなくはっきりと口を動かした。
「俺、明日転校するんだ」
あまりにも迷いなく言うから、一瞬、私の空耳なんじゃないかと思った。
内容を理解していない様子の私に、中原はもう一度繰り返す。
聞き間違いでも、空耳でもないことが証明される。
「明日、転校するんだよ」
中原が言ってることの意味をやっと理解して、だけど、やっぱりよくわからなくて頭の中で何度も反芻して、息を呑んだ。
手のひらに手汗がじわりと滲む。
暑さのせいなんかじゃない。
「……っ、あんた、冗談も大概にし――――」
「冗談抜きだよ」
真面目くさった顔で、中原は私の言葉を遮った。
いつも、みんなの輪の中で茶化したように笑ってる中原は何処にもいない。



