「なあ」
いつも通りの、中原の声がきこえた。
おどけたようなその声。
それだけで胸がいっぱいになる。
「諦める、なんて誰が言った?」
余裕たっぷりの声。
ぴん、と伸びた背筋。
「諦められるわけ、ねえだろ」
そう言って、にやりと笑ったきみの顔を、その瞳に宿る目が眩むほどの閃光を、私は一生忘れはしない。
「……うん。それでこそ、中原だ」
気を抜けば掠れてしまいそうな声でそう返せば、中原はいっそう口角を上げる。
中原の、その真っ直ぐな瞳が、言葉が、心が好きだったんだ。ほっとして、それから急に切なさが迫ってくる。
「じゃ、元気でな」
今度こそ、中原はほんとうに背中を向けた。
その背中を引き留める術を、もう持ち合わせていない。
だけど、「ばいばい」なんて絶対言ってやらない。
ねえ、私、もう絶対に逃げないから、きみも決して諦めないで。
そしていつか、ふたり描いた未来に辿り着いたなら、閃光――――刹那の輝きを永遠のものにできたなら、また。
また、夏の終わりにこの場所で線香花火をしよう。
だから今は。



