中原が言うと、ほんとうにそんな気がしてくるから 不思議だ。
「心強いね」
そう言えば、中原は「そうだろ」と得意げに笑う。
立ち上がって、今度こそ花火をバケツの水に沈めた。
ジュッと音を立てて、線香花火の熱は水に溶ける。
夏が終わる音。
この夏が終われば、中原はもう此処にはいない。
明日が来れば、もう此処にはいない。
後片付けを済ませた中原が、すくっと立ち上がって離れて行こうとする。
「じゃあな」
くるりと背中を向けて歩き始めた中原。
遠ざかっていくその背中に、まるで水の中に沈められたかのように、息が苦しくなる。
待って、行かないで。
中原の腕を掴もうとした手のひらは宙を切る。
「……っ、大和!」
中原の足が、ぴたりと止まった。
下の名前を呼ぶのも別に、初めてじゃない。
それでも、私の声にも中原の足を止める力があったんだと、少し嬉しくなった。
「広瀬?」
振り返ったきみの瞳を真っ直ぐに見据える。
すう、と息を吸って、声を言葉に載せた。
私に好き勝手言ったのはあんたなんだから、私の好き勝手な言葉もちゃんと受け取ってよ。
「やめないで、野球。あんたが追いかけてきたこと――――全部、諦めないでいてよ」
お願いだから、中原はずっと、この夏が終わっても変わらないでいてほしい。
懇願するように、言葉にすれば。



