はは、とひときわ軽い笑い声をあげて、いつも通りの口調を装って、中原はそうやって、最後まで中原であろうとする。
だけど、今のあんたは魔法使いにはなれないよ。
今のあんたの笑顔を見たって 私は笑えない。
私は、地面を睨むように見つめて、顔は少しも上げなかった。ほんの少しばかりの反抗だった。
――――中原のが先だったか、私のだったか。
ぽとり、と火花が落下したのは、ほぼ同時だった。
暗闇に包まれて、お互いの姿すらよく見えない。
バケツに花火を入れようと、立ち上がろうとしたときだった。
「茉帆」
彼の声が、私の足をその場に縫い留めた。
下の名前を呼ばれたのは初めてじゃない。
冗談で呼ばれたことなんて何度もある。
だけど、こんな声で、縋るような声で、呼ばれたのは初めてだった。
うるさいほどに鳴いていたはずの蝉の声が聴こえない。静寂の闇のなか中原と、この世界でふたりぼっちになったかのような錯覚に陥る。
「お前は、諦めんなよ」
その声は刹那、それでも私の心を真っ直ぐに穿いた。



