閃光花火



中原の高二の夏は、あの瞬間に終わった。
彼が目指す輝く場所には手が届かなかった。


夏に全国に行く、そう宣言した彼に残されているのは、来年の夏しかない。




それがあんたにとって、甲子園――――あの、光り輝く夢舞台に手を伸ばす、最後のチャンスじゃなかったの。


ねえ、中原。
なんとか言ってよ。

黙ってないで、ちゃんと言葉で説明してよ。




『仕方ねえ』




少なくとも私は、あんたがそんな簡単な五文字で諦められるような気持ちじゃなかったことを知っている。


ひどく裏切られたような気がした。


大切な夢を簡単に捨てたのは私だって同じなのに、自分のことを棚に上げて、こぶしを握りしめる。

襟首に掴みかかりたいくらいの怒りがふつふつと湧き上がっている。




私に鋭く睨まれた中原は、へらりと笑った。





「だから、仕方ねえんだって」


「……っ、そんなの」


「もう、決まったことなんだ」





自分の目指す光をまっすぐ見つめて、どこまでも自分に正直なあんたはどこに行ってしまったの。


ずっと、此処にいなよ。
明日になって、夏が終わっても、ずっと此処にいてよ。



叫び出したいくらいだった。
だけど、喉がカラカラに乾いて、声にはならなかった。




最後の線香花火、粘るようにジリジリと留まり続ける火花を見つめて、私の顔は見ないまま中原は続ける。




「明日の朝、出発するんだ」


「……そっか」


「線香花火の消費、付き合ってくれてサンキュ」


「……うん」


「おかげで荷物がちょっとだけ減った」