麗しき月は愛に染まる



「夜神さま……!ご無沙汰しております」


 店内に入ってきた人を見るなり、店長が血相を変えてその人のところまで走っていった。


 ヤガミサマ……?


 えっと、それはわたしの知ってる夜神旭飛のことかな?


 いや、まさか。そんなまさかすぎる。

 来なくていいって思ってたから来ちゃったのかも……。


 ど、どうしよう。


 慌てるな、わたし。
 慌てたらいいことなんて何にもない。


 冷静に、ポーカーフェイスを保てばきっと大丈夫。

 ふぅと短く息を吐いてからわたしは夜神旭飛という男性が入った部屋の方へ歩き出した。



「あ!ツキちゃん!ちょうどよかった!あの方は夜神旭飛さま。この店のオーナーだから挨拶してきてもらえる?」



 すると、夜神さんのところに向かっている途中で店長に声をかけられた。