麗しき月は愛に染まる


 この人は、いつもわたしから冷静さを奪う。


 わたしの忍耐力がまだまだ足りないのかな。


 結構、ポーカーフェイスを保てるようになったと思ってたのに。



「じゃあ、ほら呼んでみな」


「え、今!?」


「うん、今以外にいつあるの?」



 当たり前かのように言っているけれど、こっちは心の準備ってものが必要なんだってば!


 友達の名前を呼ぶのとはわけが違う。


 相手はあの夜神旭飛で史上最年少で幹部まで上り詰めた男。
 それに加えて、敵同士。


 名前を呼び捨てにするなんて怖いに決まってるじゃん。

 ほんと何考えてるの?



「いや、その~……」


「早く呼ばないとその口塞ぐよ」


「なっ!」



 これは冗談じゃない。

 それだけはさっきのやり取りでわかった。