麗しき月は愛に染まる



「なんでって顔してるってことはビンゴだな。お前は火門会のスパイのはずなのに故意に俺に近づこうとはしなかった。ということは火門会へは何も言っていないんじゃねえかと思っただけ」



 どこまでこの男は鋭いのか。

 この一週間ほどでそんなところまで考えて答えを導き出してしまう。


 さすがは雷鳴会で神の子と言われているだけある。


 今更だけどわたしはとんでもないやつに脅されてしまっていることを実感してなんだか泣きたくなってきた。



「……」


「んで、もちろん俺と会うよな?」



 うぅ、脅しになんて屈したくないよ。

 でも穏便に済ますためにはYESしか答えはないこともわかってる。



「なんでわたしなんですか」



 それでも足掻きたいわたしは無意味な質問を投げかけた。


 いや、正直なんでわたしなのかはすごーく気になってるから教えてほしいところではある。