「……?」
「殺すのはもったいねえかも」
「は?」
───月。
さっきまでとはまるで違う甘く優しい声色で紡がれたわたしの名前。
もう名前まで知られちゃってるんだと思ったのは一瞬だけで、その声に心を奪われた。
だって……こんなふうに名前を呼ばれたのは生まれて初めてかもしれないんだもん。
誰も優しい声で、わたしの名前なんて呼んでくれなかった。
名前を呼ばれるだけでこんな気持ちなるなんて、今日までずっと知らなかった。
「お前の全部、俺に上書きさせろ」
「なに、いって……」
そう言って夜神さんは昨夜王雅がつけたキスマークに顔を近づけた。
その刹那、チクリと小さな刺激が走って身体がびくん、と跳ねた。



