麗しき月は愛に染まる



「ないですないです!ほら!そんなこと言ってないで働きましょ!」


 わたしは嬉しそうにしている店長を適当にあしらいながら開店準備に取り掛かった。


 お店がオープンしても夜神さんは奥の個室から出てこなかった。


 仕事でもしてるのかな。

 っていうか、何歳なんだろう?


 最初のうちはそちらに意識が向いていたけどオープンしてお店が忙しくなってきたあたりでわたしの頭からは夜神旭飛のことなんて抜け落ちていた。



 「お疲れ様でした」


 「お疲れ様!気を付けて帰ってね」


 「ありがとうございます」



 午後10時。
 わたしはようやくバイトを終えてお店を出た。



【今から帰る】



 お店を出てすぐに王雅にメッセージを送信した。


 お店からは自転車に乗って帰っている。

 歩いて帰ると火門会の人間がうるさいから。