麗しき月は愛に染まる



「ツキちゃん、どうだった?夜神さまに何も言われなかった?」


「はい……!無事に帰還しました!」


「あら、珍しい。いつも新人が入ると指摘が入るのに」


「え?」



 店長の言葉に思わずわたしは驚きの声を上げた。


 指摘が入るって一体どんなことなんだろう。

 わたしは何も言われなかったけど……え、なんで?



「いや。いつもなら”お前は接客に向いてない”だとか”スキルを身に着けてから働け”だの言われてみんなコテンパンにされて出てくるのよ」



 店長がおかしそうに笑いながら言っているけれど、全然笑えない。


 あの冷酷な瞳でそんなことを言われようもんなら即退職だ。

 怖すぎてわたしなら働けないね。
 考えるだけで背筋が凍ってしまいそうだよ。



「そ、そうなんですね」


「ツキちゃんのことが気に入ったのかしら♪」