麗しき月は愛に染まる



 ―――ピッ、ピッ、ピピピッ……。

 機械音がうるさいくらい部屋中に鳴り響く。



「んー」



 まだ寝たい気持ちと早く起きないといけない気持ちと戦いながらわたしは瞳を閉じたまま、伸びをしながら定位置に置かれたスマホへと手を伸ばす。


 スマホの位置を何度か確かめながら手に持ち、目を開けてゴソゴソと動きながら停止ボタンを押した。


 時刻は午後6時30分。


 はあ……これから出勤しなきゃいけないなんてめんどくさい。

 そんなことを思いながら隣でスヤスヤと眠っている男に視線を向ける。

 トレードマークの黒髪に芸能人のように整った顔。


 今日はやけに激しかったな。出勤前って知ってるのに。


 でも、そんなのこの男……久留野王雅(くるのおうが)には関係ない。


 わたしは彼にいいように使われているだけだから。