慌てて、窓から首を出し、外を覗き込んだけれど、そこには姿形何もなかった。
月夜の晩を照らすお月様だけが、ひっそりと顔を覗かせている。
また、猫かなぁ。
うん。きっと「シマ」に違いない。
さすが、逃げ足が速いなぁ。
「何やってるんだ?早く用事を終わらせてこっちに来いよ」
和也に呼ばれ、慌ててカーテンをピシッと閉めた梨花はソファーに向かった。
ぽんぽんと膝の辺りを叩いた和也に頷き、梨花は彼の膝に股がった。
「今日は梨花の買い物に付き合ったんだから俺にもご褒美たくさん頼むよ」
「うふふふ。ご褒美って、何のこと?」
惚ける梨花に、和也は悪戯な笑みを見せた。
「こういうこと」
あっという間に、梨花の唇は彼に侵食されていった。
このときは、先程の影は猫だと信じて疑わなかった――。

