でも、これはあってはならないこと。 このままじゃダメ。 逃げるしかない。 逃げるしかないよ。 咄嗟にあたしは後退りして、玄関のドアノブに手をかけた。 ――が、震えているのかカタカタ音を立てるだけでなかなか鍵が動かない。 ストンと金属音が鳴り、チェーンに手をかけたときだ――。 その腕はいとも簡単に黒い影によって阻まれた。 「ひいっ」 背筋がゾクッとするような恐怖に身を縮ませ、あたしはゆっくりと振り返った。 と同時に、あたしは男の手で口を塞がれ、もう片方の手で身体を引き摺られた。