突然、閉まっていた風呂場のドアがガラッと開き、中から人影が動いた。 「きゃっ」 短い悲鳴とともにギュッと目を瞑った。 それは、ほんの数秒だった。 恐る恐る目を開けたあたしは、怖くてそれ以上言葉にならなかった。 人間って、本当に怖いときは声が出ないというけど、本当なんだね。 あたしも出なかった。 目の前に聳える黒い影に、あたしの体は硬直したままビクリともできなかった。 自分の置かれたこの状況が理解できなくて……。