――贖罪。
「きっと、その相手はそんなことは思っていないのだろう。しかし、ジェラルド自身が許していないように見えた」
(お父様、一体何を償おうとしていたの…? )
「当の本人は恨んでいないどころか、ジェラルドに感謝すらしているかもしれませんよ。それに、たとえどんなに大罪だって、あんたが負うことじゃありません」
「……ん……」
曖昧に頷く私に焦れたように、そっと抱いていてくれた腕の力が少し強まる。
私たちに会わずに、最後まで力を尽くした理由。
寂しい思いはしたけれど、話を聞いて尚更父を責める気にはならない。
(でも……知りたい)
――お父様に、何があったのか。
・・・
その夜。
何だか胸騒ぎがして寝つけなかった――と思ったのに。
ウィルの腕に包まれ、いつの間にかわりと深い眠りに落ちていたようだ。
「……リ。ユリアーナ」
姫さん呼びも、こうなってしまえば何だかくすぐったいけれど。
名前を呼ばれるのはもっと心地よくて、まだ微睡んでいたくなってしまう。
「寝たふりを続けるなら、襲いますよ」
軽く唇を塞がれたけれど、本当はあまりその気はないのか、覆い被さってきてもその手は寝台に置かれていて距離を縮めてくる気配はない。
「ほら、目開けて。期待に添えなくて申し訳ないんですが、敵襲です」
「……っ……!?!? 」
甘い時間をもっと過ごしたいと強請るようにくっついた瞼に、笑ってもう一度口づける。
でも、言われた言葉はおよそ恋人の睦言には程遠かった。
「てっ、敵!? ……って」
「あんた、どこまでお人好しなんですか。サミュエルとかいう男に決まってるでしょ。それともまさか、あの男を敵に数えてなかったとか言いませんよね」
「そっ……」
「とにかく、話は後で。立てますか。……そう。その剣、持っていて」
話を遮り、枕元にあった短剣を手繰り寄せる私の頭を撫でた。
玄関の鍵が壊される音がして、ウィルの腕が壁側に寄った私を更に庇うように下がらせた。
――と、少しの余裕があった後。
「……へぇ、意外と察しがいいんですね。さすがは、竜の子だ。普通の人間より、聴覚がいいのかな」
「さあ、自分はどうだよ」
サミュエルも同じ、竜と人間双方の血が流れる者。
サミュエルがその問いに答えることはなかったけれど、暗闇のなかで薄く笑ったように見えた。
「たった一人で乗り込んできて、どういうつもりだ? 俺を殺して、姫さんを攫おうとでも? あまり、見くびるなよ」
見た目はただの貴族の風体だ。
手慣れているウィルの敵ではないと思えたが、サミュエルだってそんなことは承知のはず。
「ええ、それは諦めました。ユリアーナ様は大人しく着いてきてくださらないでしょうし。それに、あなた方の絆は思った以上に強い。引き離すには遅すぎて、もしかしたら……」
――もう、あなたの子を身籠っているかもしれないじゃないですか。
「それならばいっそ、ユリアーナ様には死んでいただきたいのです。新たな竜の子が生まれてしまう前に」



