「ジェラルドの死に際……? 」
翌日。
渋ってばかりのウィルに頼み込み、早速ステフを訪ねた。
話を聞くにしろ聞かないにしろ、結局はここに来ることになるのに、相変わらずウィルは優しい。
それでも不承不承という顔をしているものの、彼の足下ではいつものごとく子どもたちが纏わりついている。
「それはもちろん、戦で死んだとか、竜から喰われたとか、そういった類いの悲惨さはないが……それでも、お前には辛い話に変わりはない。どうして……ああ、いや。なるほどな」
理由を尋ね終わる前に分かってくれたらしく、ステフの手が軽く頭を撫でた。
「それに私、聞いたまま何もしないで、弔うことすら思いつかなかったの。ひどい話だし、今更ではあるんだけど……」
「そんなことはない。普通、その目で見てもいないものは、なかなか受け容れられないものだろう。いつかは、彼をお返ししなくてはと……そう思って、ご家族を探していた」
ステフに初めて会ったのが、もう遠い日のよう。
でも、そうか。
私たちを探していたということは、多少なりともステフは手掛かりを持っていた。
ということは、お父様から個人的なことをいくつか知らされていたのかもしれない。
「……しかしな。期待させて悪いが、ジェラルドに対して私が知っていることは、あまりに少ない。だからこそ、そなたを探すのに難航していた。まさか、彼の娘の方から乗り込んでくるとは、夢にも思ってなかったくらいだ」
「何でもいいの。もし、思い出したことがあったら教えて。まず、お父様とはどうやって知り合ったの? 」
「ああ、それなら……」
ただ、悲しい話になるかもしれないと思っていた。
でも、予想外にステフは悪戯っぽい目で私を見つめ、語りだした。
「あやつも乗り込んで来たのだ。まったく、親子揃って肝が据わっている」
・・・
『人間のおじさん。こんなところで、どうしたの? 』
なかなか骨の折れる山道を歩き、ここまで辿り着いた執念に呆れたり感心したり。
少しくらいからかって――相手をしてやろうと思ったそうだ。
『ここに子どもが一人、迷い込んだだろう? 怪我をしていたから、手当をと思って探していたんだ』
『ふぅん。ボクの血なら、一発かもね。欲しい? 』
欲しいのは、竜の血かそれとも鱗か。
確かに、先ほど子どもが帰ってきた。
人間にも竜にも珍しい間の子は、人間の好奇心と欲をくすぐったのではないか。
自分だけならともかく、彼らのほとんどは身寄りがなく、竜にも人間にも見捨てられた子だ。
既に大きな傷を負った子たちに、これ以上辛い思いはさせたくない。
しかし、ここで断れば、仲間を大勢連れてくるかもしれない。
そうなると、如何にステフとて彼らを守りながらでは分が悪い。
ここで食い止める為には、多少荒っぽくなるのも致し方ないか――……。
『いや、それほどひどい怪我には見えなかったから、それには及ばないよ。それに道具ならほら、持ってきた。でも、そうこうしていたら、方向を見失ってしまってね。ここにいると思って来たんだが……そうか、君が保護者か』
『……何だって? 』
小さな竜が、子どもの保護者とは。
阿呆のようで、とんでもない食わせものかと警戒すると、つい子竜らしさが消えていたらしい。
『可愛い竜くん。君はいくつ? 』
そこまで分かっていながら、怯むどころか挑戦的な笑みすら浮かべる男を面白いと思った。
何より、ここには薬の類が圧倒的に不足している。
時折麓の人々が届けてくれてはいるが、彼らはよく怪我をするし体調を崩しやすい。
どうにかせねばと思っていたところだった。
『忘れた。そもそも、人間と数え方が同じか知らん』
(……さて、この男をどう使うべきか)
それが、始まり。



