あなたは、確かに幸福の竜ではないかもしれない。
「でも、私に幸せを教えてくれたし。きっと、これからも教え続けてくれる。幸せになりたいって意志を、私に持たせてくれる」
それはね、もしかしたら。
私が「そうならないで」って、願ってしまったからかもしれない。
「だから、想いが一緒なら、あなたも私と幸せになり続けてほしい」
「……ずっと幸せにして、幸せになって、とは言わないんですか。あんたの幸せは、レベルアップ制なんですね」
きょとんとした後、長めの髪ごと目を覆う。
かと思ったら、忍び笑いがすぐに爆笑に変わった。
「……そんなに変かしら。結構真面目にプロポーズしたつもりだったんだけど」
「さあ、俺は普通を知りませんから、想像でしかないですけど。変か変じゃないかって言ったら、めちゃくちゃ変だ」
知らないと言うわりにはっきり断言するウィルに、ちょっとは拗ねたい気分にもなるけれど。
「でも。……俺は、幸福の竜どころか、竜としても人間としても半端者です。一人か一匹か分からなくても、それでも。男として、絶対にあんたを幸せにする。それくらいの覚悟は、俺にもさせてくれてもいいんじゃないですか」
「もう叶ってる。でも、二人ならレベルアップできると思う」
絶対に二人で、もっともっと幸せになる。
「その為にも。サミュエル一派を放置はできないわよね。借金はともかく、連れ去られると分かっていながら怯えて逃げ回るのは嫌だわ。せっかく、家までできたのに」
「……あー。もう、いちゃいちゃタイム終わりですか? あんた、姫さんで世間知らずのくせに、変なとこで現実主義ですよね」
(……そんなことない。私、子どもの頃よりもずっと甘い、ロマンチストだわ)
ウィルと二人、もっと幸せになる。
それを早く早く体感したくて、そわそわして居ても立ってもいられない。
そのもっとを早く叶える為に、できることなら――たとえ難しくても、やってみたくて堪らないだけ。
「あれで諦めてくれたとは思えないし。一体、どうしたら……せめて、私が何者か……ううん、お母様のことだけでも知れたら、何か思いつくかしら」
「……どうでしょうね。あんたの母君だって、どうにもならなかったから逃げたんでしょうし。それから今の今まで、竜が腹を空かせてたはずもない。その間どっかで誰かを喰ってたんなら、別にあんたじゃなくても……」
「ウィル」
そこで笑ったのは、彼の本心じゃないことがバレバレだったから。
「……はいはい、分かりましたよ。幸福の竜の次は、姫さんのルーツ探しですか。また、当てもないことを」
確かに途方もない話だ。
なぜって、既に両親ともにもうここにはいない。
「でも、逢えたわ。本人が否定していても、あなたは私を幸せにしてくれる。だから、それも見つけられる」
「そうですか。そうまで言うんなら、鱗、あげましょうか? 」
「いっ、いらないわよ……!! 何が悲しくて、恋人の……」
分かってる。
本気じゃないことに、本気で返しすぎだって。
「せっかく、あんたならあげてもいいかと思ったのに。……なら」
瞼に口付けが落ちる。
ああ、これなら私は、いくらだって欲しい。
それに、ねぇ、ウィル。
私が思うに、きっと――ううん、確信できるの。
「その方がずっと、ご利益ある気がする。すごい効果ね」
「そりゃ、よかった。鱗よりも簡単でいい。何より、俺にとってもいいことしかありませんしね」
――その時点で、もう幸せだってのに。あんたって姫さんは。
(……ごめんね)
でも、私はやっぱり諦めたくない。
私がこの血だから、ウィルの血だから。
仕方ないなんて、どうしても思えない。
こんな私たちでよかったって、今よりもっと思ってみたいの。



