ゆっくり、顔を上げる。 机を挟んで目の前の、宏人の瞳にあたしが映る。 宏人と同じ顔をしたあたしが揺れている。 じんわりと溢れ出す切ない想いが、きゅんと胸を締めつけた。 空はすでに薄紫から群青にその色を変えている。 窓に映るふたりを、群青に浮かぶ細い月だけがじっと見ている。 二人の周りの空気が、しん・・・と息を呑んでいる。