オレンジの空は今も

「ほらぁ。砂も落ちてないじゃないの」


カバンから飲みかけのミネラルウォーターのボトルを取り出し、ティッシュに含ませ、傷口に当てる。

乾ききっていない血がティシュに赤くにじむ。


「いててて」

「我慢、我慢。男の子でしょ」

「おかんみてーだな」

「何それ。そんなこと言ってると、もっと痛くするからねっ」


さっきよりもちょっと力を入れて、きゅっと傷の砂をはらう。

「あててててて」と大げさに仰け反る宏人。

「うそばっかり」とポーチを取り出し、絆創膏をぺりりと剥がす。


「ピンクの水玉模様だけど」


あはっと笑い、宏人を見上げた。