オレンジの空は今も

「由希、おまたせ」


ガラリと勢いよく教室のドアが開き、Yシャツ姿の宏人が入ってきた。

白いシャツが眩しい。


「ごめんな、待たせて」

「ううん。おつかれさま」

「いやぁ、あちぃ」

「暑い? こんなに寒いのに?」

「うん。まだ暑い」


肩に掛けたブレザーをうちわ替わりに「あちあち」と繰り返す宏人の姿に、さっきまでの感傷はどこかへ消えてしまう。


目の前に、好きな人。

大切な人。

それだけで、あっという間に心が満たされる。